1作目と同じ年の後半にリリースされたマーヴィン、ウェルシュ&ファーラーのセカンド・アルバム。前作と同様にジャケットはヒプノシスが担当。水がなくなってひび割れた湖らしき場所に男3人が佇む、というこれまた意味深な写真となっている。
ジョン・ファーラーとピーター・ベストの共作が4曲、マーヴィンとウェルシュの共作は3曲、ファーラーを加えた3人の共作が2曲、ジョン・ファーラー単独の作曲は2曲、ジョン・ファーラーとハンク・マーヴィンの共作が1曲、マーヴィン単独の作曲は0曲となっており、ハンク・マーヴィンの作曲が大きく後退し、変わりに新人のジョン・ファーラーの曲が多く採用されている。これは新規加入のジョン・ファーラーの実力が大きく認められた証と言えるだろう。ジョンはこの当時ピーター・ベストというオーストラリア人と曲作りのコンビを組んでいたようなので、結果的にグループとは関係ない人物の作品が大きく取り上げられることとなった。
リード・ヴォーカルはハンク・マーヴィンが5曲、ブルース・ウェルシュが3曲、ジョン・ファーラーが4曲、共同が0曲となっており、ここでもジョン・ファーラーの躍進が見て取れる。また1作目ではいくつかあった共同のヴォーカル曲は皆無となり、方針の転換があったようである。結果的に奥に引っ込む形となったブルース・ウェルシュはどのように考えていたのだろうか?彼はこのアルバムの後オリビアとの破局のショックでグループを脱退してしまうのだが、やはりオリビアとうまくいかないことが影響したのだろうか?
1曲目の "Black Eyes " は1枚目と同様ガツンと来る曲。ジョン・ファーラーのヴォーカル・クレジットがあるが、ハンク・マーヴィンの声に聴こえる。ミスクレジットだろうか?2曲目の "Tiny Robin " も1枚目と同じ流れで静かなバラードだ。サイモン&ガーファンクルを彷彿とさせる不思議な雰囲気の曲である。3曲目の "Simplify Your Head までは3曲連続でジョン・ファーラーの曲であるが、アップテンポのこの曲ではハンク・マーヴィンがヴォーカルを取っている。4曲目の "Ronnie" はハンクとブルースのの共作でマイナーキーで始まる美しい曲だ。ヴォーカルはハンク・マーヴィン。5曲目の "Far Away Falling " はまたまたジョン・ファーラーの曲でちょっと暗めのゆっくりとした曲。ブルースのヴォーカルが曲によく合っている。2曲連続で静かな曲が続いたところで最後の6曲目 "Let's Say Goodbye " は明るい感じに戻る。3人の共作だが、MWF の他の作品と曲調が異なっている。ヴォーカルはブルースだがよく曲調に合っている。
Side 2 の1曲目は "Lonesome Mole " はジョニー・ヴァン・デレクのフィドルをフィーチャーした曲。カントリータッチののどかな曲でハンクがのびのびと歌っている。2曲目の "Thank Heavens I've Got You" はジョン・ファーラーの素晴らしい才能を見せつけられる曲で MWF の代表曲の一つと言えるだろう。3曲目の "Lady of The Morning " はシングルカットされテレビでもよく演奏した曲。途中ジョージ・ハリスン風のボトルネック奏法のギターが登場したりしてニヤリとしてしまう。4曲目の "The Time To Care " は次の作品を予感させるハンクとジョンの共作。前曲で突然ポップ全開になった流れが MWF 本来の陰影のある雰囲気に少しだけ戻される。5曲目の "Come Back To Nature" は不気味なシンセと雷鳴の SE で始まる曲。この曲もクレジットされているジョン・ファーラーのヴォーカルではなくハンク・マーヴィンのヴォーカルに聴こえる。最後の "All Day, All Night Blues" ブルース・ウェルシュがヴォーカルを取る。偉大なハンク・マーヴィンの陰に隠れがちなブルースであるが、ヴォーカルに関しては全く引けを取らないと言ってよいと思う。
全体としては前回限定的な役割にとどまっていたジョン・ファーラーがまざまざとその実力を見せつけたアルバムに仕上がっている。内容的には前作の流れを踏襲しつつそれをさらに発展させた形になっている。またこのアルバムは当時の最先端だった4チャンネルステレオにミックスダウンされたことでも話題を呼んだ。
サポート・ミュージシャンとしてドラムスにブライアン・ベネットが参加していることも特筆に価する。気のせいか前作よりリズムを強調した曲が目立つような気がする。キーボードは前作同様アラン・ホークショーが務めており、ベースも同様にデイヴ・リッチモンドである。何故かハーモニカ奏者としてダフィー・パワーが参加している。
ジャケット制作も前回同様ヒプノシスが担当し万全を期したのだが、セールス的には全くダメだった。なおこのアルバムはアメリカでは SIRE レーベルから発売されたが、UK 盤に見劣りしない音質なので US 盤もおすすめである。
72年に入ってブルースがオリビアとの破局を迎えグループを脱退してしまう直前に彼らはもう一枚シングルをリリースした。両面ともアルバム未収録で A 面はアラン・ターニーとトレヴァー・スペンサーの共作の Marmaduke、B 面はジョン・ファーラーとピーター・ベストの Strike A Light である。これらは後年編集 CD に収録され日の目を見ることになるが、どちらも大変素晴らしい曲である。 |