CLIFF "LIVE" WITH OLIVIA NEWTON-JOHN
 



 
1972年9月22日、23日/東京厚生年金ホール

 
Personnel :
Lead Singer---Cliff Richard
Chorus---Olivia Newton-John & Pat Carol(右チャンネル)
Lead Guitar---Hank Marvin(左チャンネル)
Rhythm Guitar---クレジットなし(Bruce Welch?)(右チャンネル)
Bass Guitar---John Farrar(中央)
Drums---Brian Bennette(この LP では誤植で e が一つ多く表記されています)
Keyboards---クレジットなし(Alan Hawkshaw?)(右チャンネル)

 


 

Side 1 Side 2
1 Can't Let You Go
1 Living In Harmony
2 Have A Little Talk With Myself
2 Walk On By / The Look Of Love
3 Sunny Honey Girl
3 Early In The Morning
4 The Minute You're Gone
4 The Young Ones from the film "The Young Ones"
5 The Day I Met Marie
5 Congratulations
6 Silvery Rain
6 Rock'n'Roll Medley
7 My Way
7 Sing A Song Of Freedom

 

レア度はけっこう高いです。
このLP は "CLIFF LIVE" (EOP-93077B)という2枚組アルバムを編集したものです。
基本的にはクリフのライブ・アルバムなのですが、最初のリリース後オリビアがすごく有名になってしまったためレコード会社が再リリースしたのです。
今考えると、72年にオリビアがクリフのバックコーラス・ガールとして来日していたなんて信じられませんね。
パットとオリビアのバックコーラスは右チャンネルに聴こえます。(Pat Carol はご存知の通りこの後 John Farrar と結婚して Pat Farrar となりました)
'Silvery Rain'と'Living In Harmony'が後にオリビアにカバーされているのは周知の事実ですね。

女の子のファンの黄色い声が目立つことから、この当時クリフが日本でも人気があったことを伺わせます。
じっくり聴いてみるとクリフの歌はなかなかうまいです。昔からやっている歌手に共通した円熟したビブラートを聴かせてくれます。

John Farrar はHank Marvin という大御所がいるのでベース・プレイヤーとして裏方に徹しています。
キーボードともう一人のギターは誰がやっているのでしょう?(クレジットなし)

録音そのものは悪くないですが、よく聴くとノイズがかなりのってしまっています。
恐らくエフェクツのノイズか照明のノイズと思われます。

 

■楽曲のオリビアとの絡み
上記のとおりこのアルバムに収録されている "Silvery Rain" と "Living In Harmony" は後にオリビアにカバーされる訳ですが、よく見ると他にも興味深い関連がいくつか見つかります。
A-1 "Can't Let You Go" の作者の Russ Ballard は74年の名作 "Heartbreaker" の作者であり、A-3 "Sunny Honey Girl" の作者のうち Roger Cook と Roger Greenaway と John Goodison は Toomorrow の "I Could Never Live Without Your Love" の作者であり、Tony Hiller は71年の "If I Gotta Leave" と "Where Are You Going To My Love" の作者("Where Are You〜" には John Goodison も作者として名を連ねている)であり、A-5 "The Day I Met Marie" の作者の Hank Marvin は75年の "It's So Easy"、76年の "It'll Be Me"、"Sam"、81年の "Silvery Rain" の作者であり、B-1 "Living In Harmony" の作者の一人 Alan Tarney は76年の "Hey Mr. Dreammaker" の作者であり、B-7 "Sing A Song Of Freedom" の作者である Guy Fletcher と Doug Flett のコンビは74年の名作 "Leaving" の作者でもあります。

■誰がベースを弾いていたのか?
クリフ・リチャードは昔は日本でもかなり人気があったようで、コアなファンのサイトがいくつかあります。
そうしたサイトの情報を総合するとコンサートは三部から成り、第一部が Marvin & Farrar 、第二部がオリビア、第三部がクリフのステージという構成だったようで、ベースは Alan Tarney が弾いて Hank Marvin と John Farrar の二人がギターを弾いていたという情報もあります。2008年に出た CD には JOHN FARRAR / HANK MARVIN (Guitar) とクレジットされ、ベースのクレジットがありません。CD の裏面の写真(オリジナルの2枚組見開き LP のバックでも使われていた)を見ると、Farrar、Marvin とは別に座ってベースを弾いている男性が写っています。この写真がこの時の日本公演のものかどうかは不明ですが、Pat & Olivia や Alan Hawkshaw が写っていることから少なくとも同時期のもののようです。するとやはり専属のベーシストが参加していたようです。また、ドラムスとベースの間にタンバリンを叩いている男性が写っています。これは一体誰なんでしょうか?ベースに関しては、ネット上では John Rostill が参加していたとする説と Alan Tarney だという説の二つに分かれているようです。写真は顔が不鮮明ではっきり判別できません。John Rostill はこの時期 Tom Jones との活動や作曲で忙しかったと思われますが、時期的に全くありえないとは言い切れません。一方の Alan Tarney はこの年の夏に行われたであろうオリビアの 2nd アルバムにベーシストとして参加してますから、 John Farrar と共にそのままクリフの極東ツアーに参加というのは自然な流れのように思えます。Dave Richmond の可能性も否定できませんが、ネット上に全く記載がないことから可能性は非常に低いでしょう。コンサートでは Marvin & Farrar のステージも設けられていたようですからそのバックのベースとドラムスを誰がやったのか?そう考えると Alan Tarney と Trevor Spencer のコンビが別にいたとも考えられます。
クレジットのないキーボードは Alan Hawkshaw でほぼ間違いないようです。

※さわだなおきさんからの情報により、ベーシストはアラン・ターニーで間違いないようです。また、相方のトレヴァー・スペンサーも参加していたようです。さわださん、情報ありがとうございました。(2014.1.11 更新)

■背景をちょっとだけ掘り下げる
前述の内容とも関係してくるのですが、参加メンバーからこのライブの背景を少し掘り下げてみましょう。
まずはメインのクリフ・リチャードについて。クリフは50年代後半のデビューから60年代半ば頃まではイギリスで圧倒的な人気を誇っていましたが、60年代後半になるとやや人気に陰りが見え始め、70年代に入ると売り上げ的に苦戦を強いられるようになります。71年の暮れに録音し2月にシングルでリリースした Jesus / Mr Cloud は3月に全英35位と奮わず、同時期には BBC TV の出演で更なる周知につとめます。4月末には Empty Chairs と Run For Shelter を録音、これには John Farrar 夫妻がバック・コーラスとして参加しています。7月には Alan Tarney / Trevor Spencer の Living In Harmony を録音し何と翌月にリリース、これは全英12位まで上りそこそこのヒットとなりました。極東ツアーの直前に The Old Accordion を録音、ツアー直後に A Brand New Song を録音し、これらは11月にシングルとしてリリースされましたがチャートインすらしませんでした。またツアーの直前には BBC TV で THE CASE というオリビアとの共演で有名な番組が放映され、かつてほどではないものの相変わらずの人気を誇るクリフが精力的に活動していたことが伺えます。
オリビアはこのツアーの1年前に出した 1st アルバムやそこからのシングルがそこそこのヒットとなり、クリフ&ザ・シャドウズと関わり出してようやく運が上向いてきたところでした。前述のとおりツアーの少し前に 2nd アルバムを録音し終えてリリースを待つばかりの状態であり、本来ならプロモート活動に専念したいところだったと思われますが、それまでの活動の経緯からクリフサイドの要請に協力したものと思われます。クリフのコンサートでも前座として場を設けてもらっていたようですし、 TV 番組にも共演させてもらってる立場ですから致し方のないところでしょう。
バック演奏陣のシャドウズ・ファミリーですが、彼らはクリフ以上に苦境に立たされていました。60年代中盤にかけビートルズやストーンズ等新興勢力の登場によって人気を奪われ、後半からはハード・ロックやプログレ、フォーク等の隆盛でリスナーの音楽的嗜好も急激に変化しつつあったのです。シャドウズは69年には完全に活動を停止し、それぞれソロ活動やセッションを開始しました。(一時的にツアーのため再結成しましたが、ブルースは参加せず代わりにキーボードの Alan Hawkshaw が参加しました。)70年になってからブルースとハンクは再会して今後の活動について話し合いをしました。その結果もう一人メンバーを入れて CS & N のようなフォーク・トリオをやろうということになり、当時ブルースのフィアンセだったオリビアの助言もあってオーストラリアから John Farrar を呼び寄せたのです。これが Marvin, Welch & Farrar です。MW&F は今日では熱心なシャドウズファンにも一目置かれる存在となっていますが、当時は商業的に全く奮わず不運なグループでした。しかも72年の春にオリビアとブルースが破局を迎え、ブルースはショックでグループを離脱してしまいます。そういう訳でこのクリフの来日公演にはブルースが参加しなかったものと思われます。では何故オリビアは参加したのでしょう?うーん、女は強い?
考えてみると、全てが運命の糸のようなもので繋がっているところが非常に興味深いです。もし68年のシャドウズのオーストラリア公演でメンバーが前座の The Strangers (John Farrar が在籍)に感銘を受けなかったら、ハンクとブルースが三人目のメンバーを探していた時にオリビアがジョン・ファーラーの存在を思い出させなかったら、もしブルースが彼女の示唆を受けてジョンの家に国際電話をかけなかったら・・・ ジョン・ファーラーは世界的には無名だったものの地元オーストラリアでそこそこ成功していて、ハンク&ブルースの誘いを断ることもできたのですが、一方でこれは更に大きな成功への大きなチャンスでもあった訳です。賢明にもジョン(と妻のパット)は誘いを受け70年の9月にはロンドンへ移住します。元々ハンクとブルースはどちらもリード・ボーカルを取れる程の腕前であり、ビートルズ風のメロディアスなボーカル・ナンバーもいくつか残しています。そうした二人に予想以上の才能の持ち主であるジョンが加わったのですから、音楽的にはかなり優れたグループとなり、オリビアも彼らから少なからず影響を受けているものと思われます。

■CD 初リリース!

このクリフの72年来日ライブ盤は長らく絶版だったのですが、2008年9月に突如8枚組 CD セットに収録されました。タイトルは And They Said It Wouldn't Last (My 50 Years In Music) で、これの7枚目が該当 CD でした。その後2010年4月になって72年日本ライブは独立してリリースされました。2011年2月現在まだ入手可能ですので、まだの方は早めの入手をおすすめします。オリビア抜きでも大変素晴らしいライブアルバムであり、現在大変安く購入することが出来、しかもCD の性格上これが最後のリリースの可能性も否定できないからです。
CD はオリジナルの2枚組 LP のものをほぼ再現したもので赤と黒を基調にしています。違いはカタログナンバーを除けば、裏面の処理ですが、最大の違いはオリジナルに含まれていた Marvin & Farrar の演奏部分が全てカットされてしまったこと!権利関係やクリフの50周年記念ということなのでしょうが、実に残念です。
音質的には2008年のリマスターであり、LP とは少し違っています。低域がかなり上げられ音圧も非常に高めです。やはりアナログの持っていた繊細さや強弱は失われてしまいましたが、それでも当時のライブの様子をよく再現したライブっぽいサウンドとなっています。ただし The Minute You're Gone 、The Day I Met Marie 等静かな部分では妙なイコライジングが施されており残念。(10kHz 弱〜15kHz 弱の部分を大きく下げています)
改めてじっくり聴いてみるとベーシストがかなりのテクニシャンであることが分かります。またアラン・ホークショーの存在がいかに大きいか、ピアノもオルガンもこなせるキーボード奏者の存在がいかに強力かということもよく分かります。ハンクは本当にプロフェッショナル。盛り上げ役に徹していますが、ワウペダルを使った渋いプレイやガット・ギター、金属弦フォークギターを使ったカッティングやアルペジオ等ふだんあまり見せない顔も見せます。この人はバッキングをやらせてもセンス抜群ですね。逆にジョン・ファーラーはさらに裏方に徹しており、実際にはかなりギターも上手いのですが、このライブではあまり真価が発揮できていないように思います。クリフのボーカルは王者の貫禄であり、余裕すら感じさせます。

 

 

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