■PDF とは?  

PDF とは Portable Document Format (簡単に移動可能な書類形式)の略で、異なる OS 間でもスムーズに書類を転送できるように Adobe Systems (アドビシステムズ社)によって開発されました。
つまり、書類の作成に使用したアプリケーションソフトウェア、ハードウェア、 オペレーティングシステムに関係なく、書類を表現できるファイルフォーマットなのです。
作成者は使い慣れたソフトを使って作成し、受け手側はOS・アプリケーションに関係なくオリジナルのレイアウトで表示・印刷が可能です。

文書ファイルというものは、送り手と受け手が同じバージョンの同じアプリケーションを使うことが基本です。
さもなくば、開くことすらできないか、たとえ開けてもレイアウトが大きく違ったりすることがあり、またたとえ同じバージョンの同じソフトを使っていても、作成者が特殊なフォントを使っていたりすれば受け手側はオリジナルとは違う体裁の文書を見ることになります。

例えば、Mac ユーザーがクラリスワークス(かつて Mac ユーザーの間で標準的だった統合ソフト)で、表組やビットマップ画像を含んだ文書を作成し、それを Windows ユーザーに配付しようとした場合、 Windows ユーザーの大半はクラリスワークスなどというマイナーなソフトは持っていないのでそのままでは渡せませんが、PDF 形式にすれば Windows ユーザーでもオリジナルどおりの体裁で開くことができます。
また Windows ユーザーの間で文書をやりとりする場合でも、例えば広く普及した MS Word で作成した文書ファイルを渡そうと思った時 Word を持っていない人にはそのファイルを開くことができないし、たとえ持っていてもバージョンの違いによってレイアウトが崩れるかも知れません。
このような場合に PDF 形式が有効です。

多少レイアウトが崩れたりフォントが違っても問題ない文書であれば HTML が軽くて最適なのですが、作成したのと全く同じように見せたい場合やきれいに印刷する必要がある場合、文書の内容を改変させたくないが、テキストのコピーは許可したい場合等に PDF は便利なフォーマットです。
HTML はインターネットでの使用が前提のため(もちろんオフラインでも使えるが)容量が軽いことが求められ、結果的に印刷には不向きなフォーマットであり、画面表示に適した形式であると言えます。
個人的に PDF の最大の利点の一つは、ベクトル・データを扱える、ということだと思います。
ベクトル・データを扱える手軽で普及したソフトが存在しないため、このことはあまりクローズ・アップされず実際の PDF でもビットマップ画像ばかりが貼り付けられていますが、Illustrator の廉価版が将来販売されれば状況は変わるかもしれません。

 

PDF の特徴を以下にまとめてみました。

・汎用フォーマットである
PDF は JPEG のような汎用フォーマットであり(OS に依存しない、という意味で)、作成元のアプリケーションがなくても無料で配付されている Adobe Reader で誰でもそのファイルを開き、オリジナルと同じ体裁で閲覧・印刷することができる

・作成時のレイアウトをほぼ完全に再現可能
グラフィックを含む文書でもほぼ完璧に元文書のレイアウトを再現できる
PDF 1.3からフォントの埋め込みが可能になり、ほぼ完全にオリジナルどおりのスタイルで受け渡し可能になった →ただし、Acrobat Reader4.0以降が必要

・既に「世界標準」と言ってよい程普及した形式である
役所の配付する様々な申請書や民間企業の製品マニュアル等、既に世間で大きく普及したフォーマットである

・仕様が公開されたオープンなフォーマットである
PDF の開発元のアドビが仕様を一般に公開しており、閉じた規格ではない

・インターネットでのブラウザとの連係
かなり昔から wwwブラウザとの連係は考慮されていたが、表示が重く従来は敬遠されがちだった
しかし近年はハードウェアの処理能力が劇的に向上し、回線インフラもブロード・バンドが当たり前になり、なおかつ Adobe Reader がバージョン7以降大幅に速くなったこともあって、実用上全く問題ないレベルに達している

・ファイルサイズが比較的軽い
さまざまな率の圧縮に対応しており、大抵の場合オリジナルの作成アプリケーションの形式より軽くできる

・ベクトルデータを扱える
前述のとおり Illustrator 等で作成したベクトルデータをそのまま扱えるため、印刷時に威力を発揮する
ベクトル画像なら拡大・縮小してもきれいなまま印刷・表示可能で、容量も軽い

・セキュリティ機能の搭載
文書に対してさまざまな制限をかけられる
例えばコピーできないようにしたり、印刷できないようにもできる

・きれいに印刷でき、商業印刷との親和性も高い
家庭用プリンタできれいに印刷できるのはもちろん、商業印刷との親和性も高い
PDF は Postscript 技術が基盤になっており CMYK カラーにも対応しているので、現実に PDF 入稿も行われている
印刷に強いフォーマットと言える

・リンク可能
HTML のように文書内でさまざまなものにリンクが可能
ネットへのリンクももちろん可能だし、動画や音声ファイルへのリンクも可能

・文書の基本であるテキスト検索が可能
テキストが含まれる文書の場合、語句の検索が可能

PDF にはバージョンがあり、少しずつバージョンアップし機能が拡張されていますが、一般的な用途ならフォントの埋め込みが可能なバージョン1.3で十分でしょう。
1.4以降は XML や透明効果、レイヤー、Open Type フォント等への対応がされています。

 
■ビューワー(閲覧ソフト)  

PDF を普及させるために Adobe は当初からフリーの閲覧ソフトを提供してきました。
それが Acrobat Reader(現在は Adobe Reader に呼称を変更)です。
ただ、この Acrobat Reader は昔から「動作が重い」、「描画が遅い」、「使い勝手が悪い」といった批判に晒されており、より軽い他のビューワー・ソフトもいくつか出回っているようです。(例:Foxit Reader)
最近のパソコンは性能的にも十分になっており、また最新の Adobe Reader7 は動作がかなり改善されているので、2GHz 以上の CPU + メモリ512MB + Reader7 ならよほどビデオに問題がない限り快適に動くと思います。
開く PDF のバージョンにもよりますが、低スペックマシンの場合 Acrobat Reader4.05 が速くてよいです。
私は Mac OS 9.1 で Acrobat Reader 4.05 がメインですが、実際ほとんど問題は起きません。

←日本ではほとんど普及しなかったバージョン2.0.1(英語版)
←同じくほとんど普及しなかったバージョン2.1(英語版)
←このバージョン3.0から日本語版が登場し、普及し始めた
がこの頃はパソコンの性能も今一つだったこともあって動作は重かった...
(Mac 版の3.0は今使っても軽くはないです)
←現在でも十分使えるバージョン4.0
画像は Mac 版のものですが、Windows 版も評判は上々
←上の4.0とこの5.0で Mac OS9.1 でのビューワーとしては事足りる
5.0は私のオンボロマシン環境ではちょっと重いです
←2005年10月現在の最新版であるバージョン7.0.5(@Win2K)
動作が軽くなったと評判も上々

 

 

 
■酷い PDF  

時おりビットマップ画像のみの PDF に出くわすことがありますが、まるで少しの文章をわざわざ Word で作ってメールに添付する行為のような気がします。
そもそも文字の印刷にビットマップは適さないし、単なるビットマップ画像なら JPEG で事足りるからです。
ビットマップ画像のみの PDF で私が今までに許せると思ったのは、ある自動車のカタログをスキャンしたものをページごとにまとめて PDF にしたものでした。
これなら存在理由があると言えます。
つまり、複数の画像ファイルを別ページで表示する、という用途です。

逆に今までに一番酷いと感じた PDF は、ある会社が倒産した時にそのサイト上にアップされた PDF で、裁判所が発行した書類をコピーしたものをスキャンして製作されたようなのですが、画面で読むのがやっと、というシロモノでした。
これは、基本的には「複数の画像ファイルを別ページで表示する」という用途であり、なおかつ文書の性格上あらためてワープロで打ち直すのが憚られるものなので、スキャン画像をそのまま PDF 化することに正当性があると言えるのですが、文字主体の文書をスキャンする場合最低でも画面ではっきりと読めることが必須であり、できることなら印刷にも耐えるものが望ましいのに、容量を軽くすることにこだわりすぎて失敗してしまった例だと思います。(下図参照)

← 当該の PDF を Acrobat Reader で100% 表示したもの
モノクロ2階調のため、既に文字の細部が潰れてしまっている
当然印刷すればもっと酷くなり、実際に読めない箇所が数カ所あった
ただし、モノクロ2階調のおかげで容量は劇的に軽い
← Acrobat Reader で400% 表示したもの
裁判所の公式書類ということでスキャン画像の PDF にしたのだろうが、あまりにもお粗末
ビットマップ画像は解像度以上に拡大すればジャギーが出るのは当たり前とは言え、これはちょっと酷すぎる
多少容量を食ってももう少し色数があれば...

上記 PDF (具体的なことは差し障りがあるので、もちろん詳述しませんが...)は3ページで約32KB、作成・変換は Acrobat 4.05 Import Plug-in for Windows となっていました。
恐らくスキャナか OCR ソフトに付属のプラグインだと思われます。
担当者はファイルサイズを軽くすることに注力しすぎたようで、容量の軽さと2階調化は芸術的なのですが結果として読みづらい、という本末転倒なものになってしまっています。
やはり多少容量を食っても下図のようにはっきり読めるものが望ましいでしょう。(住民票をスキャンしたもの)

← Acrobat Reader で100% 表示したもの
グレースケールならこんなにきれい!
確かに白黒画像とは比較にならない程容量を食うが、現代のブロードバンド環境では問題にならないだろう
← Acrobat Reader で400% 表示したもの
無論パーフェクトではないが、容量とのバランスから言って十分に許容範囲であろう
 

 

 

 
■ PDF の作成情報  

PDF は Adobe の Acrobat で作成するのが王道ですが、それ以外にも様々なアプリケーションで作成できます。
PDF 書類を Adobe Reader で開いた時に Ctrl + D(Mac は Cmd + D)でその文書の作成元アプリケーションや変換エンジンについての情報を得ることが出来ます。
下記に私が調べられる範囲のものをあげてみました。

作成アプリケーション
PDF バージョン
表示されるアプリ名
表示される PDF 変換エンジン
Adobe PhotoDeluxe 1.0
PDF 1.0
表示されない
表示されない
※Windows 版の Acrobat Reader 3.0 ではアプリ名 Adobe PhotoDeluxe、変換 Adobe PhotoDeluxe 1.0 for Windows と表示される
Adobe PhotoDeluxe 2.0
PDF 1.1
Adobe PhotoDeluxe
Adobe PhotoDeluxe 2.0 for Windows
Adobe Illustrator 5.5
PDF 1.0
Adobe IllustratorTM 5.5
Acrobat PDF File Format 1.0 for Macintosh
Adobe Illustrator 7.0.1
PDF 1.2
Adobe IllustratorTM 7.0.1J
Acrobat PDF File Format dobe for Macintosh
Adobe Illustrator 8.0.1
PDF 1.2〜1.3
Adobe Illustrator 8.0
Acrobat PDF Library 4.0
Adobe Illustrator 9.0.2
PDF 1.3〜1.4
Adobe Illustrator 9.0.2
Adobe PDF Library 4.800
Adobe Illustrator 10.0.3
PDF 1.3〜1.4
Adobe Illustrator 10.0.3
Adobe PDF library 5.00
Adobe Photoshop 4.0.1
PDF 1.1
Adobe Photoshop 4.0
Adobe Photoshop for Macintosh
Adobe Photoshop 5.0.2
PDF 1.2
Adobe Photoshop 5.0
Adobe Photoshop for Macintosh
Adobe Photoshop FFFFCC">ない
078
PDF 1.1
Adobe Photoshop 5.5
Adobe Photoshop for Macintosh
Adobe Photoshop 6.0.1
PDF 1.3〜1.4
Vector Data Adobe Photoshop 6.0
Adobe Photoshop for Macintosh
Adobe Photoshop 7.0.1
PDF 1.3〜1.4
Vector Data Adobe Photoshop 7.0
Adobe Photoshop for Macintosh
Adobe Photoshop CS2
PDF 1.4〜1.6
Adobe Photoshop CS2 Macintosh
Adobe Photoshop for Macintosh -- Image Conversion Plug-in
Adobe PageMaker 7.0.2
PDF 1.2〜1.4
Adobe PageMaker 7.0J
Normalizer 6.0 pmnorm
読んde!!ココ7.1.1
PDF 1.3
表示されない
表示されない
読んde!!ココ11.0.2
PDF 1.4
表示されない
表示されない
e.Typist 10.1.14.19
PDF 1.4
e.Typist v.10.0 for Windows
e.Typist v.10.0 for Windows
Mac OS X
PDF 1.3
(プレビュー)
Mac OS X 10.4.9 Quartz PDFContext
※Mac OS X は OS 自体が PDF をサポートしているのでどのアプリからでも PDF 作成可能
FreeHand 8.0.1
PDF 1.0〜1.2
表示されない
表示されない
Adobe Acrobat 5.0
PDF 1.3〜1.4
PScript5.dll Version 5.2.2
Acrobat Distiller 5.0 (Windows)

※XP の標準ビューアで印刷した場合

Adobe Acrobat 5.0.5
PDF 1.3〜1.4
Adobe Photoshop Version 7.0
Acrobat Distiller 5.0.5 (Windows)
※Photoshop7 で作成した画像を Distiller で直接変換した場合に Adobe Photoshop Version 7.0 と表示される
※他のアプリ使用の場合アプリ名には何も表示されない場合が多い
PDFWriter 4
PDF 1.2
不明
Acrobat PDFWriter 4.0 for Power
 
■総括
一般に公開されている PDF ファイルでは変換に Distiller を使用しているケースが多いように思います。
作成アプリケーションはさまざまですが、上記の他に Microsoft Word、Adobe FrameMaker、Quark XPress、Adobe InDesign が多いように感じました。

 

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