■200MHz の CPU ではダメなのか?

前のページで低スペックマシンで十分です、と書きましたが、それでも推奨スペックには CPU/400〜500MHz 以上でメモリ/512MB 以上が望ましいとも書きました。
ではそれを下回るスペックのマシンでは実際どうなんでしょうか?

試したことはありませんが、恐らく 100MHz の CPU のパソコンでも不可能ではないと思います。
ただ 100MHz で音声の編集は苦痛でしょうし、その時代のマシンではハードディスクの増設一つとっても容易ではありません。
100MHz の処理能力というのはネット閲覧ですら非常にストレスがたまるようなものです。
色々な作業が多少なりともちゃんとできるようになったのはやはり 200MHz 前後の CPU からでしょう。
ただ 200MHz ではっきりとした線引きができる訳ではなく、例えば PowerPC 604/604e には 132MHz、150MHz、180MHz、200MHz とあり連続しているため「じゃあ180MHz はダメなのか?」と言われると返答に窮する訳ですが、そうすると線引きそのものが不可能になってしまうため 200MHz を一つの区切りとしてあげています。

もちろん2008年6月現在 200MHz の CPU というのは市場価値ゼロどころかマイナスであり今メインで使っている人はほとんどいないでしょうが、使わなくても捨てられずに持っている人も多少はいることでしょう。
そうしたマシンを有効活用できるかどうかも含めて 200MHz のパソコンでアナログ音源を CD にすることが可能かどうかを Mac と AT 互換機の両方で検証してみたいと思います。
なおここでは LP のようにピッチ補正の不要な音源を想定しています。
カセットテープのようにピッチ補正が必要な編集についてはこちらのページ→を参考にして下さい

◆◆◆ 参考 ◆◆◆
パソコンの体感速度に影響するパーツは大きく4つあり、CPU とメモリとビデオとハードディスクです。
一番重要なのは言うまでもなく CPU ですが、いくら CPU が速くてもメモリが少なければ仮想メモリ(メモリが足りない場合に不要な部分をハードディスクに書き出して空きメモリを作る仕組み)が稼動しまくりでちっとも処理が進まない、ということにもなりかねません。
ビデオがショボいと重い画像を処理する際にやたら描画が遅かったり、ゲームのように 3D のグラフィックが速い速度で変化する場面では本来の画面を描画しきれなかったりします。
ハードディスクが遅いとアプリケーションの起動に時間がかかったり、Photoshop のようにスクラッチ・ディスクを使うアプリケーションでは処理が遅くなったりします。

例えば 200MHz の CPU で Mac OS 9.1 を動かす場合、64MB のメモリとオンボードのビデオと SCSI-2 のハードディスクのマシンではかなりストレスがたまります。
個人的に 604e/200MHz の CPU に最適の OS は 8.1 だと思います。
これを仮にメモリを 512MB に増やすとスピードは変わらないものの安定度が向上します。
ビデオを後付けの性能の良いものに換えると、これが 200MHz の Mac ?と思えるぐらい動作がキビキビするようになります。
ハードディスクを速いものに換えても体感で分かる程速くなったと感じます。
私は PowerMac 9500 に 604e/180MHz の CPU と 768MB のメモリ、TwinTurbo 128 の PCI ビデオカード、Ultra SCSI のハードディスクで使っていたことがありますが、本来 180MHz の CPU では重くて適さないはずの OS9.1 がけっこうサクサク動いていました。
要は CPU だけが速くなる要素ではない、ということです。

 

200MHzMacintosh で LP を CD にする

■使用ハード/ソフト
Mac の 200MHz の CPU には2種類あり、PowerPC 604e と 603e です。
当時 603e はエントリー向けで 604e はハイエンドという位置付けでした。

←テスト用の Mac には PowerMac 7500 を使用


テストした Mac は以下のスペックです。

▼ハードウェア
 
コンピュータ本体
Power Macintosh 7500/100
CPU
PowerPC 604e/200MHz Version 2.2 (Interware Booster)
キャッシュ
L1: 64KB (CPU 内蔵)+ L2: 512KB (後付け増設分)
システムバス
50MHz
メモリ
320MB
作業用ハードディスク
IO DATA HDVS-UM13G (Ultra SCSI 接続)→中身は SAMSUNG SV-1296A Ultra ATA 12.0GB 1999年7月製造 平均シーク時間:9.5ms 5,400回転 バッファ:512KB
CD-R ドライブ
TEAC CD-W512SB Rev.1.0K (Ultra SCSI 接続)
Ultra SCSI ホストアダプタ
REX-PCI30P
   
▼ソフトウェア
 
OS
Mac OS 8.1
録音
Coaster 1.1.3(Christian Roth 氏作のフリーウェア)
編集
TWE Wave Editor 2.3.0(YAMAHA のフリーウェア)
CD 書き込み
B's Recorder GOLD 1.8.1(BHA の商用ソフト)

200MHz のパソコンとしてハード的にはメモリが多いことを除けば平均的なマシンでしょう。
オリジナルの PowerMac 7500 は PowerPC 601/100MHz、メモリ16MB、ハードディスク/CONNER CFP1080S 1GB、VRAM2MB、SONY CDU75S-25 4倍速 CD-ROM ドライブという使い物にならない仕様でしたので、かなり拡張してあります。
作業に使用した SAMSUNG SV-1296A は元々 ATA 仕様のものをアダプタを介して外付けの Ultra SCSI 接続にしたもので、実測で 12MB 前後の転送速度でした。
PowerMac 7500 が標準で対応している OS のバージョンは7.5.2から9.1までですが、今回は CPU が 200MHz ということもあり8.1を選択しました。
速度・安定性・実用性を総合的に判断してのことです。

■接続等の準備作業
今回は低スペックマシンを使ってなるべくお金をかけずにそこそこいい音で LP を CD にする、というコンセプトでやってみます。
よって本来は専用のオーディオ・インターフェイス経由で取り込むべきところを内蔵のサウンド入力を使ってやってみます。
PowerMac 7500 のサウンド入力は以下のようになっています。

←PowerMac 7500 は RCA の音声入出力を標準で備えています。
パソコンとしては珍しい例でしょう。
上段左側の上から音声入力 Rch(赤色)、Lch(白色)、ビデオ入力(黄色)、ビデオ入力(S 端子)です。
上段右側は上から音声出力 Rch(赤色)、Lch(白色)です。
下段は上がマイク入力、下がスピーカー用出力です。
これを見た瞬間に接続に必要なケーブルが両側とも RCA ピンプラグのものであることを見抜かなければいけません。
→接続端子・ケーブルの種類を見る

オーディオ機器の音声出力(RCA ピン)と上記写真左上の音声入力とをケーブルでつなぎ、右下のスピーカー端子(ステレオ・ミニジャック)にヘッドフォンをつなぎます。
次に Mac OS のコントロールパネルから[モニタ & サウンド]を開きます。(OS 9.1の場合は[サウンド]を開く)

左上のサウンドの音量はスライダーで好みの音量に調節し、消音のチェックをはずしておきます。
その右のバランスは中央にします。
中段左のサウンド出力は、今回はスピーカー出力かにヘッドフォンをつないでモニターしますので内蔵スピーカで OK です。
その右のサウンド出力は今回は RCA 入力を使用しますので RCA 入力を選択します。

装備しているサウンド入出力によってここに表示される項目は異なりますが、今回は RCA 入力を使うので RCA 入力を選択します。
最後のサウンド出力レートは CD の規格が 16bit/44.1kHz ですから 44.100 kHz を選択します。
設定は以上で終わりですので、
LP を実際にかけてみて音が来ていることを確認します。
※旧型 Mac のサウンド機能についてさらに知りたい方はこちらをクリック→

■録音(AIFF ファイル作成)
接続等の準備作業が終わったら録音作業に入ります。
録音ソフトは使い慣れたものでかまいませんが、ここではフリーソフトの Coaster を使います。
Coaster は見た目は今一つですが、シンプルでツボを押さえた「使える」ソフトです。
最終バージョンの1.1.3を使用しましたが、動作も安定していて申し分ありません。

←Coaster は左図のように大きく6つの部分から成っています。
英語のソフトですが、大して難しくはありません。

 

1番の Input Source Settings です。
この画面では入力の設定を行います。
日本語部分が文字化けしていますが、動作に支障はありません。
左側はコントロールパネルの設定がそのまま反映されているはずですが、左上からサウンド入力の録音用装置(文字化けしているのは内蔵の文字)、入力源、サンプル・レート、サンプル・サイズ(量子化ビット数)、ステレオ/モノラル、モニターの音量です。
右側の Input Gain が重要でここで入力レベルを設定します。
マウスより細かく設定したい場合、Cmd + 矢印上下キーを使います。
Link L+R は左右のスライダーを同時に動かすためのもの、AGC は入力レベルを自動で設定させるものです。
AGC の使用は推奨されていません。
 
2番のピーク・レベルメーターです。
一番上に赤い四角が二つありますが、これはクリッピングが起きたことを示しています。
クリッピングが起きないようにできるだけ大きなレベルで録音するのがコツです。
メーターの下はクリッピングが発生するまで何 dB の余裕があるかを示しており、クリックするとリセットされます。
←メーター部分を Cmd + クリックすると下のヘッドルーム・ディスプレイが利用可能なdB 表示から最大の絶対レベル表示に変わります。
 
※クリッピングとは「切り取り」の意味で、デジタル録音では量子化できる容量が決まっているため、録音レベルが高すぎる場合「あふれた」音が切り取られてしまうことを言います。
当然のことながら本来あるべきデータの一部がない状態でデータ化されるため、実際に聴こえる音はしばしばノイズを含むものになります。
 
3番の Recording Options です。
一番上はクリッピングが起きた時ずっと表示させておくかどうかを設定し、右のボタンは表示をいったんリセットする時に押します。
その下はクリッピングが起きた時に警告音を鳴らすかどうかの設定で、その下はクリッピングとみなすまでの最大レベルの連続サンプル数の設定です。
その下は無音を検知した時にどのように録音を停止・再開するかの設定です。
最後はカチッというノイズを取り除くためのもので、ここにチェックを入れると最初と最後の部分が常に振幅の少ないゼロ・クロッシングポイントになるように修正されます。
 
4番は実際のオーディオ機器と同じです。
左から録音ボタン、停止ボタン、一時停止ボタンで、一番右のはさみのボタンは録音中にクリックするとファイルを分割できます。(Eliminate Clicks のチェックがはずれている場合のみ1サンプルも失われずに次のファイルの録音へと移行)
下の数値は上から録音経過時間、指定したフォルダ内に保存可能な残り時間、クリッピングの発生回数、録音したファイル数を表しています。
 
5番は録音ファイルの保存先フォルダの指定です。
左図のように日本語のボリューム名、フォルダ名は文字化けします。
下は保存するファイルのクリエータをあらかじめ指定するためのものです。
 
録音が終わった時そのファイルを保存するか破棄するかを決めます
※実際には録音したファイルは既に存在しており、名前を付けて正式に保存するか削除するかを選択します。

以上で録音は完了です。(Coaster に含まれている TUTORIAL - Automatic Recording についてはここでは触れませんが、英語の苦手な方でどうしても訳文が読みたい方はメール下さい
出来上がったファイルは Mac OS 標準の AIFF ファイル(Windows の WAVE ファイルに相当)で、16ビット/44.1kHz の AIFF ファイルはそのまま音楽 CD 形式で焼くことが可能です。
実際は曲ごとの分割や曲間部分の削除が必要ですから、次に編集・整形作業に移ります。

 

■AIFF ファイルの編集・整形
現在 A面と B面の2つの AIFF ファイルができています。
これを曲ごとに分割します。
ソフトウェアは YAMAHA のフリーウェアである Wave Editor TWE を使用します。(もし他に手持ちのソフトがあればそれでも OK です)
TWE は完全にディスクベースのアプリケーションで、コピーもカットもクリップボードではなくディスクにコピーされます。
従って大容量メモリを必要とせず、低スペックマシン向けのアプリケーションです。

↓まず A面のファイルを開きます。なるべく画面いっぱいに広げます。

 

↓どこか適当な箇所を選択します(事前に両チャンネルを選択しないと[全てを選択]が片チャンネルだけになるため)

 

 

↓Cmd + A で全てを選択します

 

 

↓Edit メニューから DC Offset... を選びます(最初に直流成分を除去しておく)

 

 

←Auto Elimination(自動除去)か Specify Offset Value(オフセット値を指定)のどちらかを選びます。
通常は自動除去で問題ないでしょう。

 

 

↓TWE が自動でオフセットを検出・除去します

 

 

←オフセットが検出されなかった場合、左のようなメッセージが出ます
「オフセットはありませんでした。データは変更されません。」

 

 

波形編集ソフトを使いこなすコツの一つはまず波形を自在に拡大・縮小できるようになることです。
拡大・縮小の仕方は各ソフトでまちまちですが、TWE の場合ウィンドウ中央上部の Zoom というところで行います。
横方向と縦方向に拡大・縮小可能です。
ここは表示を調節するだけですので音声自体には何の影響も及ぼしません。
試しに色々触ってみて波形がどのように変化するのかを把握して下さい。

 

 

↓横方向に縮小して1曲目の全体を把握します。(赤い印は後から付けたもので実際には表示されません)

 

 

↓1曲目を正確に選択するために終わり部分を拡大します

 

 

↓1曲目の終わり部分を拡大したところです。音が完全に消える箇所を正確に探します。
 
←選択した部分だけを再生するには右端の Region Play ボタンをクリックします(赤く印を付けたアイコン)
 
↓必要に応じて波形をさらに拡大して曲の終わりを特定します
曲の始まりと終わりを厳密に特定するのはけっこう面倒で大変な作業です。
この作業のカギは波形を縦方向、横方向に拡大し選択部分を何度もよく聴くことです。
目と耳で追い込んでいきます。
少し長めに選択しておいて別ウィンドウにカット&ペーストし、そのウィンドウ内で細かく追い込んでも OK です。
基本的には曲の部分を正確に選択し、別ウィンドウにカット&ペーストして保存します。

 

 

 


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