CD が登場した頃は、オーディオ・マニアの多くがアナログ・レコードの方が音がよい、と主張していました。
現在では総合的に見て CD の方が優位にあるように思います。
アナログ盤は埃・静電気によるノイズや、盤を針が擦る音を完全に取り去ることが困難であり、このことだけでも勝敗はついてしまっています。
アナログ盤で CD を上回るような音を出そうと思ったら、ターンテーブル、カートリッジ、フォノ・イコライザー等に相当大きな出費を強いられることを覚悟しなければなりませんし、50万円以上もする
Keith Monks(業務用のレコード洗浄機)やそこまでいかなくてもニッティ・グリッティぐらいは揃える必要があるでしょう。
CD の最大の問題点は、16bit/44.1kHz
という規格にあると思います。
最初から DVD オーディオ(24bit/192kHz)ぐらいの規格であればよかったのに・・・
ところで DVD オーディオはなぜもっと普及しないんでしょうか?
アナログ・レコードの価値は、媒体自体にあるのではなく、それが最初に世に出た音源である、ということです。
当時レコーディングされた音に「比較的近い」音がそこにはつまっているのです。
再発された CD の場合、たいていマスターがいじられてしまっており、媒体の音質の違いを論じることが無意味になってしまっていると思います。
またそれとは別にマスター・テープの劣化があります。
技術は進歩しても、マスター・テープ自体が劣化してしまっているケースが最近見受けられます。
70年代の LP の方が、保存状態さえ良ければ再発の CD より音がよい場合も考えられるのです。
(ちょっとマイナーですが、英国のロック・バンドのファミリーの CD がまさにそうです。もっともファミリーの場合適切なマスター・テープを用いていないことが原因のようですが.....)
いずれにせよ、たいていの場合再発の CD は高音が持ち上げられており、他にもコンプレッサー等で音圧やアタックが強調されたりリバーブが付加されたりしていて、オリジナルの
LP と音質の良し悪しを論ずることには意味がなくなってしまっています。
これは片側が良くてもう一方はダメ、ということではなく、両者は全くの別物であり別の価値を持っている、ということなのです。
媒体自体の優劣に関しては、前述のとおり総合的に見て CD
の方が有利です。
アナログ盤はノイズと歪みの点で不利(理論的な話ではなく、実際の経験から)であり、CD はそれらの点でアナログより優れています。
CD の問題点は理論的には16bit/44.1kHz という低い規格とジッターです。
現実の優劣もほぼ同様なのですが、CD にはあまり語られない大きな問題があり、それはマスタリングの問題です。
大半の人にとっての悪い音とはこもった音なので、マスタリングは高音を強調したものになりがちなのです。
結果として多くの CD は高音をイコライジングされた不自然な音になってしまっています。
これは大半のリスナーがオーディオにそれほどお金をかけないため、低品質のスピーカーで再生されることを前提としているためなのかもしれません。(もっともミニコンポなどは不自然に高音を強調した出音に調整されているようにも思えますが・・・)
不自然に中高音を強調されたリマスター盤が発売されると「さらに音がよくなった」などという感想があちこちで聞かれます。
一般大衆の望むものは「不自然に中高音を強調された音」なのかもしれません。
そうやって考えると、一般の支持を集めるものは「分かりやすさとそれを強調した」ものである場合が多いように思えます。
マクドナルドのハンバーガーやコンビニのファーストフードなんかはいい例です。
アナログ・レコードをボンドパックやシステマ歯ブラシやリンス等の手法で可能な限りノイズ除去して
CD に焼き、それをパソコン上で WAVE ファイル(もしくは AIFF ファイル)にしてヘッドフォンでじっくり聴き比べてみると上記のことがよく分かります。
(私の環境は PowerMac9600 + RME 96/8 24ADA + SONY MDR-CD900ST という安価なものです)
多くの場合アナログ・レコードの方が自然な音になっていますが、それは媒体の違いによるものではなくマスタリングの違いによるものに思えます。
アナログ・レコードの場合、実際には16bit/44.1kHz の枠内には収まり切らないので厳密な比較にはなりませんが、プチプチノイズさえなければアナログ・レコードの音の方が心地よく、自然な響きであり、微細な音も再生しているのは驚きであり、マスタリングというものについて深く考えさせられます。
■参考(サンレコ誌2006年3月号より引用)
Q:洋楽の CD は国内盤と輸入盤を入手できますが、マスタリングによる音の違いってあるの?
A:基本的には海外アーティストの作品を国内盤用にマスタリングしません。
ただし、日本限定盤や日本先行発売用、それにボーナス・トラックが収録される場合は、音圧やレベルをほかのトラックと合わせることはありますが、音色自体に手を加えることはありません。
そもそもマスターは海外から DDP (DCA が開発したフォーマット)や CD-R で送られてくるのですが、ボーナス・トラックなどの曲を足す場合はコンピューターにデータを取り込みます。
日本盤用の追加トラックがある場合は海外から CD-R や DAT などのコピーが送られてくるので、日本盤用に加える曲をコンピューターに取り込み、1本の
DDP にして、CD-R や SONY PCM-1630 などのマスターを作ります。
この場合コピーのコピーがコンシューマーに渡ることになるので(デジタル・データですが)、輸入盤の方がプロダクション・マスターに近くなります。
ただし、ビッグ・アーティストの場合、海外のマスタリング・スタジオで各国用のプロダクション・マスターを作ることがあります。
この場合、基本的に音は変わりません。
〜(中略)〜
また、日本独自企画のコンピレーション・アルバムなどにさまざまな楽曲を収録する場合は予算の関係でレコード会社でマスタリングすることが多いのですが、個人的にはこの場合も各曲のレベルや音圧を調整するだけで、EQ
などの処理は基本的にしてほしくはないと思います。
(バーニー・グランドマン・マスタリングの YASMAN 氏談)
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