Metaphormosis

 

 

 


TENTH PLANET TP049(LP)

 

 

Side 1
Side 2
1. Hypocrite
1. I Talk To The Wind
2. Newly-Weds
2. Murder
3. Erudite Eyes
3. Make It Today
4.Tremolo Study in A major from the Spanish Suit
4. Wonderland
5. Scrivens
5. She's Loaded
6. Make It Today
6. Why Don't You Just Drop In ?
7. Digging My Lawn
 

 

 

2001年に発売されたGiles, Giles & Fripp の未発表音源を集めたアルバムです。
何故か CD ではなく LP という形での発売で、多くの人が指摘しているとおり通常より分厚く重い盤です。
全世界1,000枚限定の英国プレス盤で、コレクターズ・アイテムとなるのは必至と思われます。

アルバムのタイトルの"Metaphormosis"は「変態、変身」を意味する metamorphosis をもじったもので、詩のタイトルとしても使われていることから、一般的ではないにせよ、このアルバムで初めて使われた造語ではないようです。
想像するに、蝶から芋虫への逆の変身、つまり通常とは逆の一種の退化を意味しているのでは?もちろん蝶がキング・クリムゾンで芋虫がGGFです。

アルバムジャケットは上の写真を見ると分かりますが、左手にちょうど日本のLPの帯風のデザインでグループ名とアルバム・タイトル、レーベル名が配置されており、その背景には3人が立って写っている写真が用いられています。
撮影日時は明らかではありませんが1967年10月19日から1968年3月頃の間に撮られたのではないかと思われます。場所は彼らが67年10月16日に引っ越した93A Brondesbury Road NW6 のアパートの裏庭です。
左端に立っているブリティッシュ・トラッドでビシっと決めた長身でスマートな青年が Michael Giles です。
中央で厚手のジャケットのポケットに手をつっこんだまま足を開いて立っているのが Robert Fripp です。シャッターのせいか眼をつむっており、口を開いているようです。顔は笑っていませんが、舌舐めずりしているようにも見えます。何と言っても驚くのは
髪の毛がない!ことです。顎ひげも生やしており、ずんぐりむっくりした体型や、その独特の姿勢からどう見ても当時まだ20代になったばかりの若者には見えません。(笑)
右端でよれよれのシャツをはおり、左手にビジネス・バッグを持ち、ひらひらのついた帽子をかぶって立っているのが Peter Giles です。顔つきこそ端正で、がっしりした筋肉質の体つきですが、服装がよれよれなのでまるでヒッピーのようです。この人は写真によって非常に顔が変わる不思議な人です。

さて肝心の音の方ですが、アルバムの総体的な印象としては、
・音質ははっきり言ってよくない。(全体的にピッチが不安定で音揺れがかなり認められる。ヒスノイズも多い。)
・残念ながらモノラルである。
・Peter Giles はいい曲を作っているが、ボーカルははっきり言ってヘタだ。
・このアルバムの表の主役は Ian McDonald で裏の主役は Peter Giles である。

といった感じです。
このアルバムを聴くと、よく言われる GGF と KING CRIMSON との音楽的な乖離の理由が少し見えてきます。鍵は Ian McDonald です。彼はちょうど72〜74年期の John Wetton に相当する役割を果たしているように思われます。ポップでわかりやすい側面をバンドに持ち込んでいるのです。もちろん御存知の通り「それなり」の能力ではなく、作曲能力・演奏能力共に当時のトップクラスと言ってよい程のものです。
では各曲の解説に移りましょう。

A面
"Hypocrite" (3'39) 
<不気味なイントロで一部クリムゾン・ファンの期待を否が応でも高める曲です。(笑)
出だしにシンセサイザーのような音と雨音のような妙なエフェクト音が入っています。(誰がどのように出しているかは不明でクレジットもないが、エレクトリック・ギターによって作られたノイズのようにも聴こえる)
また、Al Kirtley なる謎の人物がピアノ奏者としてクレジットされています。(Trendsetters Ltd. のメンバー? )
不気味なイントロの後は拍子抜けするほど普通のボーカル・メロディーが続きます。
Fripp のギターは言われなければ彼のプレイだと気付くことはないようなプレイで、会ったばかりのジャイルズ兄弟の指示通りに弾いているようです。
この曲は1967年9月下旬にボーンマスのビーコン・ロイヤル・ホテルの地下室でPeter Giles がダウランド・ブラザーズから購入した Revox F36 というテープ・レコーダーによって録音されたもので音質が悪いです。 音がこもっており、ヒスノイズも多いです。その音質がこの曲の無気味さを一層盛りたてています。
楽器間のバランスは意外によく、ドラムスがほとんど埋もれてしまっていることを除けば、ちゃんとボーカルが前に出ており、ピアノとギターは伴奏になっています。当時の機材と、時代背景と、素人による録音であるにしては上出来でしょう。録音はオーディオ好きの Peter が担当しているようですが、彼なりに色々研究していたようですね。

"Newly-Weds" (1'59)
92年発表のリマスターCDにアレンジが似ているが完全な別テイクバージョン。
"Cheerful Insanity" で聴かれたあの印象に残るギターのリバーブはここでは聴かれません。
最初から22秒目のところで音揺れが認められます。
他にも音揺れが何ケ所かで認められ、ややピッチが不安定です。ヒス・ノイズも多いです。
オリジナル・アルバムと同様に最後はドラムスだけになり、フェードアウトしてゆきます。 最後のボーカルの部分で口笛のような音が入っていますがあれは一体何でしょうか?。

"Erudite Eyes" (6"47) 
この曲も音揺れが何ケ所かで認められ、ピッチが不安定です。
後半の即興演奏ではオリジナル・アルバムと全く異なる演奏で楽しませてくれます。 演奏時間自体も長いです。
この曲では何と言っても Ian McDonald のフルートですね。 フルートがギターとハモってこの曲の別の側面を見せてくれます。

"Tremolo Study in A major from the Spanish Suit" (1'40) 
Fripp のギター独奏。エレクトリック.ギターでクラシック・ギターの曲をやっています。
GGFとは何の関係もないように思えます。(単にこの時期に Peter によって録音されたもの)
ピックではなく指で弾いているものと思われます。
彼のルーツがはっきりとわかる曲です。

"Scrivens" (2'12)
Ian McDonald が前面に出た曲です。 Peter Giles のジャズ趣味が現れた曲でもあります。
Fripp もこもった音でジャズ・ギターを弾いていますが、言われなければ彼のプレイだとは気付きません。
途中からフルバンドのような曲調に変わります。 なかなかいい曲です。印象に残るメロディーはさすが Ian ですね。

"Make It Today" (4'46) 
Giles, Giles & Fripp の演奏とは思えないような垢抜けた雰囲気の曲です。
アップテンポの明るい曲で、美しいメロディーを持っています。
さすがに Ian McDonald の作曲で、毛虫から蝶に変わったような感があります。
Ian はボーカルでも非凡な才能を見せつけ、Michael Giles と見事なハーモニーを聴かせてくれます。
Fripp のギターも冴えまくっており、その卓越したプレイを堪能できます。
メンバー全員がノリまくっており、曲自体が演奏に影響している好例です。
この曲を聴けるだけでもこのアルバムを購入する価値はあります。

"Digging My Lawn" (1'53)
Ian のフルートが加わったことでまるで別の曲のようなアレンジになっています。
ただ、彼のフルートのせいで Fripp のギターは逆に引っ込んでしまいましたが...
フルートにはリバーブがかけられており、前面に出ています。 吹きまくっている、という感じです。
プレイ自体も素晴らしいです。 ちなみに何故か Ian の演奏のクレジットがありません。ミステイクでしょう。

B面
"I Talk To The Wind" (3'17)
KING CRIMSON のバージョンとは全く異なったアレンジで、この曲の別の魅力を引き出しています。
Judy Dyble のバージョンとアレンジが似ていますが、より力強く説得力に満ちあふれています。
"YOUNG PERSON'S GUIDE" ではアコースティック・ギターが Ian McDonald のプレイであるとクレジットされていましたが、このLP にはクレジットがありません。何故でしょう?
CRIMSON のバージョンでは Ian の素晴らしいフルートを堪能できたのですが、ここでは Fripp が実に素晴らしいソロを披露しています。
この頃の Ian の曲は秀逸ですね。

"Murder" (2'40)
このアルバムは未発表曲が多くて楽しませてくれますが、この曲も初登場の曲です。
Peter Giles の作曲ですが、これまでの彼の曲とはだいぶん雰囲気が異なります。 Ian の影響でしょうか?
帯域が広くいい録音機を使っていますが、なにぶんにも音揺れがひどく残念です。
ここでも Michael Giles が美しい声の持ち主であることを再確認できます。本当に彼はいい声をしていますね。
楽器演奏よりボーカルに重きが置かれている曲であり、Judy Dyble が参加した貴重な音源の一つです。

"Make It Today" (3'25)
"Make It Today" の Judy Dyble バージョンです。
途中でフェードアウトしておりA面の Michael/Ian バージョンより収録時間が短いです。

"Wonderland" (6'09)
Fripp 作曲とは思えないような曲です。
中間に全く曲調の異なるボーカル主体の比較的長いパートがあります。
とは言え、いきなり多重録音のギターでハモらせるあたりが彼の作曲であることを伺わせます。
Michael Giles のドラミングも "Cheerful Insanity" の頃からはかなり進化しています。
Ian の加入もあり、ボーカル・ハーモニーに重点が置かれたアレンジとなっています。

"She's Loaded" (3"15)
92年発売のCDでおなじみの曲。
この曲もボーカル・ハーモニーに重点が置かれており、コーラスがちょっとビーチ・ボーイズ風です。
Peter のボーカルも作曲も格段に進歩しています。

"Why Don't You Just Drop In ?" (3'40)
KING CRIMSON がライブでやっていた演奏とは随分異なったアレンジで驚かされます。
テンポが速く、コンパクトにまとまっており、やはりボーカル・ハーモニーに重点が置かれています。
ノリが軽くポップなアレンジです。
KING CRIMSON の "EPITAPH" ではクレジットが 'Fripp, Lake, McDonald, Giles' となっているのにこのLPでは Fripp の作曲とクレジットされています。
Fripp のファズを用いたソロが印象的です。

 

 

 

 

←アルバムの裏に掲載された写真 1

 ここでも印象的なのはやはり Fripp です。 まるでカエルのような顔をして微笑んでいます。
妙に小柄で、度のきつそうな眼鏡をかけています。
また、 何故かこの写真では髪の毛があるように写っています。
右奥の Michael Giles は不機嫌そうな顔をしていますが、よく見ると手に持っているカップが逆さまです。
Peter はハンサムな眼光鋭い好青年として写っています。

 
     

←アルバムの裏に掲載された写真 2

Ian MacDonald を含めた4人での珍しいショット。
Ian が意外に小柄なのが分かります。
Peter はまるで Michael のような顔で写っています。

 

 

 

 

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(CD:P25L 25052)へ

 

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